ナッジ理論とは何か

「行動経済学」という言葉も今ではすっかり定着し、書店に足を運んでみれば、多くの「行動経済学」と題名や帯に入った本が多く立ち並んでいるのではないでしょうか。
「ナッジ理論」は、そんな行動経済学において最もポピュラーな理論と言えるのかもしれません。

こちらの記事では、ナッジ理論とは何かを解説するとともに、「ナッジ」について思考を広げるのに役立ちそうな事例も交えて、紹介したいとと思います。

「ナッジ」とは何か

「ひじでつついて軽く行動を促す」
これが、ナッジ(英語:nudge)という言葉そのものの意味です。

人の行動を自然に促す、ちょっとした工夫。

これを言い表す言葉として、「ナッジ」はよく使われます。

「北風と太陽」の話に出てくる、太陽の様なもの、とも言えます。

これが行動経済学において提唱されたことが画期的とされ、ナッジ理論を提唱した経済学者リチャード・セイラー氏がノーベル経済学賞を受賞したことで、大きな話題を呼びました。

「ナッジ」の何が画期的なのか

リチャード・セイラー氏は2017年に、行動経済学の発展に大きく寄与したとして、ノーベル経済学賞を受賞しました。
経済学の誕生が1890年とされる(Wikipedia より)のに対して、現在の形としての行動経済学の始まりは1990年代とされ、歴史の浅い学問と扱われることも少なくありませんでした。

「行動経済学」でノーベル賞になるというのも、まだ数例のみ。
そんな中でもリチャード・セイラー氏の受賞は行動経済学の学術的な地位を大きく押し上げるものでもあったのです。

経済学においては、「インセンティブ=報酬」と「ペナルティ=罰」によって人の行動が規定される、という前提での理論が数多く見られます。
対して「ナッジ」というのは、直接的なインセンティブやペナルティを用いるのではなく、「環境やデザインの工夫によって、人々の自発的な行動変容を促す」という概念。

こう書くとやや分かりづらく、ピンと来づらいいですね。
こちらの記事 では、「ナッジ」的な設計工夫が取り入れられた事例が複数紹介されていますので、良ければ参考にしてみてください。

「ここまで登れば◯カロリー」と書かれた階段によって、エスカレーターの混雑解消

「世界最高のサッカー選手はどっち?」タバコの吸殻でアンケート投票が出来るゴミ箱によって、ポイ捨て防止

と言った事例が紹介されています。

ナッジ「理論」と聞くと、なんとも大それたものに思えてしまうものですが、ちょっとしたひと工夫で、人々の行動がけっこう変わりそう!と期待させられるナッジ的事例が身近にいくつもあるのだなと、事例を調べれば調べるほど、感心させられるばかりです。

まとめ:インセンティブもペナルティも、工夫次第。

直接的なインセンティブやペナルティに頼らないナッジの文脈とはやや逸れるかもしれませんが、私の身近な例を一つ、紹介させてください。

子どもを連れて行くかかりつけのクリニックが、完全予約制で、予約時間に遅刻した場合には、500円のペナルティを設定しているのです。

え、500円払うの、それは嫌だなぁ、、、と一見思えてしまいそうなものですが、結果的に皆時間を守ることで渋滞が起きず、利用者側としてもとても快適で、評判の良いクリニックになっています。
特に体調の良くない小さい子どもを連れて、いつまでかかるか分からない待ち時間を過ごすとなれば、親御さんはそれはもう大変です。
渋滞を起こさずに診察出来ることで、クリニック側も効率よくオペレーションを回せ、サービスの質、経済面でも良い循環が出来る。

一見シビアなペナルティに見えて、皆がハッピーになれる好例だなと思いました。

インセンティブやペナルティが必ずしも『北風と太陽』で言うところの北風になるということではなく、設計の仕方によって人の行動がどのように促され、どんなサイクルで経済や組織が回っていくのか。

そうした発想とともに、組織内でのルールや環境のデザインを設計してみると、より良いものが生まれるかもしれません。

idon!というサービスにおいても、1ドルの妙がナッジ的に利くことで生まれるものがあると良いなと考えながら、運営させてもらっています。