バーチャルウォーターとは何か

「バーチャルウォーター」と聞いても、何を意味するか、イメージがつかない方も少なくないことかと思います。

「日本は水が足りていない国」と言われると、いや、雨もちゃんと降るし海にも囲まれて川も多くて、そんなことはないでしょう、と言いたくなるかもしれません。

ところが実際は、この「バーチャルウォーター」で見てみれば、日本は大量に水を輸入している国なんです。

これがどういうことなのか、バーチャルウォーターとは何かとともに、説明していきたいと思います。

間接的に使う水を「見える化」する

私たちが普段生活する上で手にしている、日用品や食料。
これらを一つ一つ作るために資源が消費されていて、バーチャルウォーターというのは、こうしたモノを消費することで、間接的に、他国の水をどれぐらい使っているか、その量を推定するという考え方で、ロンドン大学のアンソニー・アラン教授によって提唱されたのだそうです。

目に見えないところで迫る、水不足。

ある国でモノをたくさん消費するほど、ある国では大量に水という資源が消費される。
水資源が不足することで、ヨルダン川やナイル川といった巨大な川が走る地域では水を巡り紛争が起こっていたりもします。

そうした背景から、世界水フォーラムが開かれ、SDGs(持続的な開発目標)の中でも、「安全な水とトイレを世界中に」と言うゴールが定義され、水資源を守るための取り組みが国際的に拡がっています。

環境省のサイトでも、古いデータではありますが、日本のバーチャルウォーター事情がまとめられています。
2005年時点で、約800億立法メートルの水を、日本は間接的に輸入している、とのこと。
年々食料自給率が低くなっているとなれば、バーチャルウォータの量は増える一方となります。

余談ですが、海外では「ウォーターフットプリント(Water Footprint)」という概念がバーチャルウォーターに代わるものとして使われていたりもします。
バーチャルウォーターよりも包括的に、より資源の大本を辿っていく考え方で、興味がある方はこちらの記事で分かりやすく解説されているので見てみてください。

まとめ:資源を循環的に考える

私が今回このテーマを取り上げたいと思ったのは、単に水を大事に使おう、と言う話ではなくて、循環的にものを考えると、また違った視点や思考が拡がってくる、と言うことを改めて体感してもらえる人が少しでもいれば、と言う趣旨であります。

大学時代に工学部で環境・エネルギーシステムの専攻で学んでいる中で、環境LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)という概念を知り、当時はバイオマスエネルギー等がやや持て囃されつつあったのですが、燃料を生産する過程で消費される資源を考慮するとそもそも環境に優しくないよね、という話がありました。
こうした視点を持つと、エコが実際はさほどエコじゃない、という活動も少なからずある、物事はそう単純ではない、ということに思考が巡らせられます。

最近のビニール袋有料化についても、それ自体の効果は限定的、むしろ逆効果だ、などと言う意見も強く見られます。
私個人としてもどちらかと言えばネガティブな見解ではいるのですが、これが象徴的な啓蒙活動となり、多くの人が環境に配慮するアクションを起こした結果、効果てきめん、という世界線も無くはないのだろうな、とも言えます。

今回、SDGsとも少し絡めてバーチャルウォーターを紹介しました。
SDGsについて知れば知るほど、建設的に設計されよく出来ているなと思うばかりで、循環的に、多面的に、物事を捉える訓練にもなりますので、名前は知っているけれどあまり具体的に知らない、という方はぜひちょっとでも調べてみてもらえたら嬉しいです。

こちらの落合陽一さんのSDGs本も、俯瞰的にSDGsに触れられて、おすすめです。